地震の話というと日本ではナマズが有名だが、なぜナマズが象徴になったのだろうか。

ナマズについては、アジアの各地で、「大地を載せている魚」との伝承があります。それゆえにもともと、地震の原因をナマズの震動に結びつける考え方があったものと思われます。しかしそれは、自然現象に対する数ある説明の仕方のひとつに過ぎませんでした。それが爆発的に拡大し一般化したのは、意外に新しく、幕末の安政地震の頃です。如拙の禅画「瓢鯰図」を戯画化した大津絵に、鯰を瓢箪で押さえようとする猿の滑稽画などがあり、これらのモチーフを使用した一種の呪符である鯰絵(鹿島大明神が鯰を押さえつける絵)が盛んに作られました。猿は鬼門に対する守護神で比叡山の神使でもあり、瓢箪は不老不死の象徴です。関東の守護神である鹿島神に姿を変え、地震の元凶である鯰を押さえつける役割に転化する要素は、大きく持っていたといえるでしょう。よくいわれる地震の際の異常行動も、理由として挙げられなくはありませんが、異常行動を起こす動物には鯰以外にもウナギや烏など多々あり、なぜナマズなのかの説明になりません。上記のような歴史過程が重要と思います。