氷河期の終わりに列島地域に残った人々は、意図的に同所に住むことを選んだのか、それとも海進によって帰れなくなってしまったのでしょうか。
まず注意しなければならないのは、氷河期から縄文時代へかけての気候変化・環境の変動は、例えば数日や数年のうちに世界が一変してしまったというわけではなく、極めて長い時間をかけて変化が生じ、そのなかでヒトは次第に適応をしていったのだということです。日本列島に生活することになった集団も、そのなかで食物を求めて移動してきたのであり、温帯森林と内湾が多く成立し始めた同地に、生活のしやすさを見出したわけです。ただし、いわゆる「本州」でさえ、広大な土地を持っています。列島のなかを移動しながら生活していた最初期の人々に、過去から連綿と続くユーラシアの地形図が記憶されていたわけではないでしょう。彼らには恐らく、「閉じ込められた」という認識もなかったと思われます。