捨身飼虎のお話のなかで、菩薩の捨身をみて天人が喜び賛嘆したとの記述がありましたが、天人はどういった立場、情況にいたのでしょう。自ら捨身することができないのなら、王子を賛嘆するのは自己否定ではないでしょうか。

天人はこの場合、地上で繰り広げられる生命のせめぎ合いとは、別次元にいます。日本でいう神に近い立場です。彼らにとっては、地上の生命の葛藤などはかりそめのものにすぎません。例えば、肉体を持った菩薩が捨身をして転生するのが、天人の世界に当たるのです。