すべて血統や門戸で決まるというバラモン教に、なにか良い点はあるでしょうか。

現代的価値観からすれば、身分制を維持する機能が強いバラモン教には、あまり良い点はないですね。しかし、身分制が長く続くと、社会の安定を目指すために、ピラミッド構造の上層部だけでなく、ボトムラインの人々さえもがその持続を望むことがあります。すなわち、あえてピラミッド構造を攪乱し、上層へ昇る危険を冒さなくとも、生命が維持できればよいという考え方です。これは、王権や国家、社会がその構造を維持するため、人々にイデオロギー操作を行った結果なのですが(例えば、自分の分際を弁え守ることが大切であるなど)、多くの人々に説得力をもって受け入れられてしまう。そのために仏教も、シャカが創始した当時は、極めて困難な道を歩みました。イエスキリスト教も同様で、社会に対するアンチ・テーゼとしての「新興」宗教は、やはり当初は大きな反発、場合によっては弾圧を受けます。現在のように平等社会が当然とされるのは、長い時間をかけて社会のあり方、人々の施行のあり方が改変されたから、先人たちがそれを目指して格闘してきたからなのです。