さまざまな学問の根幹にマルクス主義が関わったのは、非共産主義国では希有なこととの説明があった。もしそうなら、なぜ日本ではそのようなことになったのだろうか。日本の社会がマルクス主義に適合的だったのだろうか。

歴史的・地域的にさまざまな差異、多様性があることを考慮しなければなりませんので、不正確な発言になりますが、列島の社会には、個人の突出を抑え集団の利益を優先する傾向が強いところがあると思われます。ゆえに、ヨーロッパ的な意味での〈近代的個〉の確立が進まず、いまでも「世間」の評判や「空気」を読むことが重要視される。マルクス主義と親和性があるかどうかはあらためて考えなければなりませんが、列島の共同体が社会主義的な一面を持っているのは確かでしょう。