以前に、最近のオリンピック報道に強いナショナリズムを感じる、という人の話を聞いたことがあります。先生はどうお考えですか?

今年の、リオ・オリンピックにおける日本の報道は酷かったですね。かつては、より多くの国々の活躍を丁寧に報じていた。各国の選手に対する敬意、礼儀がしっかりありました。いまは、自国の選手を応援するばかりで、醜いなあと思います。ぼくは個人的には、東京オリンピック開催には反対です。歴史学的、環境倫理的にみれば、前回の東京オリンピックにおいても、それに関連した東京の大改造によって消し去られたものが多かった。また関連工事による物価の高騰と労働力の偏重によって、東北地域の復興に障害が生じている。これを足がかりにリニア・モーターカーの実用化が進められれば、その膨大な電力を賄うために原発を稼働させざるをえなくなる。原発が低コストという喧伝は使用済み核燃料の処理、事故の起きた場合などまったく勘定に入れていないので、でたらめもいいところです。福島第一の事故処理をみても、終息の目途は一向に立たず、その処理費用や賠償金が、結局税金や電気料金を通じて国民の負担になっている。列島の火山が活動期に入っていること、気候の極端化による激甚災害が頻発していること、政府の煽るテロ行為をリアルに考えた場合、原発再稼働は自殺行為でしょう。オリンピックはやはり単独の事業として遂行されるわけではなく、政治・社会・経済の動きと連動しているので、注意しておかないと大きな問題を生じることになります。