聖徳太子と聖書との関係に注目したという久米邦武の論文を、少しでもよいので紹介して下さい。

久米は、明治38年(1905)刊行の『上宮太子実録』で、隋唐の時代に中国に入ったネストリウス派キリスト教=大秦景教を遣唐僧が持ち帰り、一種の翻案の形で聖徳太子の伝説が作られたと述べています。とくに、『書紀』よりあとの『聖徳太子伝暦』など太子伝におけるエピソード、間人皇后への夢告や厩舎での誕生譚などは、「聖書の焼直し」であると断じています。この種の考え方は在野の歴史愛好家の間でも根強く、例えば渡来系秦氏キリスト教徒とみて、太子の側近的な位置にあった秦河勝が、これらの物語を創作したのではないかとの見解もあります。