なぜ古代の人々は、夢のお告げや神のお告げを信じるようになったのでしょうか。

それが歴史というものです。すなわち、世界観や宇宙観、価値観、何を真理と考えるかは、時代によって大きく異なるのです。神霊が夢によって人間に何らかの情報をもたらすとの考え方は、東アジアでは、前11世紀以前に遡る殷帝国から存在します(その甲骨文字のなかに、夢にて託宣を受ける概念が見受けられるのです)。夢という不可思議な体験が、身体から離脱し神霊の世界と接続する事象だと考えられたのでしょう。王権成立以降、王やシャーマンに担われていた神秘体験である夢見は、やがて社会階層的に下方へ浸透してゆき、それとともに夢解きの知識・技術も成文化されて詳細化、多くの解夢書などが書かれてゆくことになります。鎌倉時代、南都仏教復興の立役者のひとりであった明恵などは、自身の夢を書き留め分析した『夢記』を残していますが、慈円法然親鸞などにも、重要な夢告をまとめた文献などが存在します。