エミシの時代にも、アイヌのような北方交易はあったのだろうか?

授業でも源頼朝が水豹の障泥を用いていた事例を紹介しましたが、もちろん北方交易は存在したと考えられます。すでに10世紀の『延喜式』交易雑物では、獣皮や熊胆などが貴重な交易品として規定されていました。『奥州後三年記』『台記』『吾妻鏡』など、院政期〜鎌倉初期の文献には、奥州藤原氏による海獣皮の貢進記録があります。藤原氏が、蝦夷の北方交易をとりまとめて自己の利益とし、中央政権との交渉の道具に利用していたことのあらわれでしょう。頼朝の奥州合戦後の入京における水豹皮使用は、彼が平泉を滅ぼしその権益を掌握したことの誇示だとみられているのです。