「移動」という言葉の重要性に思いを馳せたとき、「移民」「難民」という言葉が去来しました。「移動」に基づいて考えると、これらの言葉にも、やはり差別的ニュアンスが生じてしまうのではないでしょうか。

確かに、「移民」「難民」は、受け入れる/拒否する側、すなわち外側からのニュアンスが大きいですね。事実、それらの人々がマイナスの価値を付与され、差別の対象となるケースは世界各地で起きています。列島の歴史を移動の観点から読みなおし、前近代村落の移動における柔軟さが明らかになれば、定住の視点からよそ者を差別する感覚が、実は極めて新しく、創られたものだという事実も浮かび上がってくるかもしれません。もしそうなれば、移民問題等々についても、もう少しスムーズにものごとが考えられるようになるかもしれません。