フィールドワークが哲学においても重要な意味を持つのは真理だと思いました。北條先生は南相馬市にフィールドワークした際、宮本常一のように、その土地に住む人々に話しかけ、コミュニケーションをとったりしたのでしょうか?

南相馬については、いわゆる聞き取り調査のような形のフィールドワークは進めていません。幾つかの地域では、情報を聞き取ることを主体に置いた調査をしていますが(海外においても)、南相馬はいまのところ、周囲の自然環境をじっくりと観察し、思考しながらただ歩いています。自分では「独歩考」と読んでいますが、アカデミックでシステマティックな調査からはみえてこないものが、そこから起ち上がってくるのではないかと考えているのです。ただし、何人かコミュニケーションをとっている知人、友人はいて、その輪はだんだんに広がってきています。