震災後、半壊のまま放置された寺社などをみて、それが地域の信仰心や精神状態に何らかの影響を及ぼすのか、及ぼすとしたらどんな影響を及ぼすのかと、疑問がわきました。

現在は、帰宅困難区域の指定が解除されて間もなく、またやはり「安全な状態」とはいいがたいので、地域の歴史・文化、信仰を、充分に取り戻してゆく心的余裕がないのだといえるでしょう。しかしより北側の地域では、津波被害に遭った多くの神社が復興され、途絶状態にあった神楽奉納などの祭礼も復活しています。長い時間をかけて育まれてきたたくさんの信仰スポットですので、これを復興してゆくのも短い期間では無理なのかもしれません。ある意味では、「本当に自分たちにとって大切なものは何なのか」をじっくりと考えてゆく機会にもなっている。いずれにしろ、今後、信仰世界の復興がどのように果たされるのかは、その地に暮らしている人々の主体的な選択の結果として理解されるべきです。