日本の中高の歴史教育では、未だ国家史・経済史にばかり重点を置いている気がします。アナールの仕事は、日本では浸透していないのでしょうか?

教科書で教えられる歴史は、いわば国家の提供するものですから当然といえば当然ですが、未だに一国史=ナショナル・ヒストリーの枠組みを脱却できていません。社会史に関する記述も以前よりは増えたと思いますが、教えられる分量の点からいっても限界があるのでしょう。これらを解消するためには、やはり中高の歴史の科目自体を、できる限り思考型に移行させてゆき、思考することを通して教科書の歴史記述自体を相対化してゆく必要があると思います。また、若い学生の多くは、社会史・経済史・文化史より、英雄の活躍する国家史のほうに関心を持ってしまう、という現実も否定できません。日本社会にそうした傾向が強いとすれば、その意味でも社会史は根づいていないといえそうです。