ランケについて、なぜキリスト教的な神の占めていた部分に、同じく宗教の神ではなく、天皇が据えられていったのですか? / 日本はそれを、自覚的に行ったのでしょうか?

やはり近代日本においては、天皇が現人神として、強固に位置づけられてゆくからでしょうね。前回お話しした国体の生成過程と対応しつつ、天皇を不可侵で真正な神聖な存在と位置づける議論が展開してゆきます。ナショナル・ヒストリーの編纂を期待された重野・久米らにおいては(とくに重野は『大日本史』系の史官であったわけですから)、歴史の原理の中核に天皇が居座ってしまうことはある種当然だったのでしょう。ただし、実証主義の場合それは無自覚に生じた事態で、だからこそ軋轢や葛藤を引き起こす要因になったのだと考えられます。