文化を位置づけるには、同時代のうち先進的なものに目を向けるべきではないだろうか。そういう意味では、大和絵や王朝文学、宗教などをまとめて国風であると指すのは、間違いだとは思われない。

この時代の文化をどのように呼ぶかはあらためて考えなければなりませんが、問題は、前回お話ししたような文脈で「国風文化」という用語が成り立ち、そのために誤解が発生しているということです。それを、「間違いだと思われない」といっていたのでは、何の修正にもなりません。なお、何をもって「先進的」とするかも問題ですが、当時の人々の基準で考えるならば、先進的なものは間違いなく「唐物」だったのです。いわゆる片仮名・平仮名も、ヤマト言葉の音を表記する文字を漢字から開発したものであり、また中国の書物をヤマト言葉でいかに訓読/記述するかという需要のなかで創り出されてきたもので、中国文化の受容・消化の中心に存在するものです。