『竹取物語』を人と植物というテーマで扱う場合、かぐや姫は「人」と捉えるのでしょうか?

ああ、確かに難しいですね。『竹取』の文脈に則していうならば彼女は天女で、もともと神仙世界である月に住まう者です。それが何らかの罪を犯し、地上世界へ流謫されている。すなわち異界の存在ですが、しかし神仙は人間が修行を重ねてなるものと考えれば、とりあえず人間側に考えておいてもよいでしょう。誤解のないようにいっておくと、この授業で重視しているのはモチーフの問題です。人間が樹木になる、あるいは樹木が人間になる。そうしたモチーフがどのような背景をもって生成され、どのような神話や伝承のなかに現れるのか。『竹取』の文脈は文脈として、そこに駆使されるモチーフが、いかなるアジア的広がり、心性をもって成立しているのか。そのあたりが解釈のしどころです。