歴史学においては、80〜90年代までマルクス主義の影響が強かったとのことだが、その後短い間になぜ180度異なる考え方が広まってしまったのだろうか。

授業でもお話ししましたが、180度というわけではありません。現在でも40代より上の研究者は、世界史の発展原則自体は信じていなくとも、マルクスの思想にはシンパシーを持っていると思います。1960、1970年代の安保闘争は、学生運動市民運動と一般社会を断絶させることに成功し、80〜90年代において、「運動」を忌避する心性が社会のうちに醸成され、再生産されてゆきます。結集しデモを行う、ストライキを行うといった労働者において当然の権利が、日本社会では、あたかも「悪いこと」「迷惑なこと」のように教えられ、現在でもメディアなどで類似の意見が垂れ流されています。そうした考え方が、世代交代を通じてようやく研究者の世界にも及んできた、といえるかもしれません。