マージナルマンは共同体の中へ入ることはないのでしょうか。共同体に入って、その外側との間を往来するような、トリックスター的な役割はないのでしょうか。

重要なのは、境界的であるということが、その人間の本質ではなく、シチュエーションによって付されるラベルに過ぎないということです。例えば旅行者などは、故郷へ帰れば共同体の成員となりますが、旅先では常にマージナルな位置づけをされます。典型である廻国修行者や漂泊民なども、それぞれの共同体に戻れば歴とした成員です。つまり境界認識の発生とは、見方を変えれば共同体間のコードの差異が原因ともいえるのです。ある共同体に属する者が、別の共同体に属する者を異質と感じ疎外する。それでも異質な秩序が侵入してくるところに、トリックスター的な役割が発現するのでしょう。