鎌足は軽皇子の器量に疑問を持ったとありますが、度々逸る中大兄には疑問を抱かなかったのでしょうか。

「大織冠伝」の文脈は、諫言をする忠臣/広い度量で受け入れる名君、という君臣関係を描き出すために述作された虚構でしょう。君主の政は聴政といわれるように、家臣の言によく耳を傾け公正に判断することこそが重要なのです。ゆえに、逸る中大兄を描くことも、諫言を聴く情景が付加されていれば、その徳を傷つけることにはならないのです。