樹木と人間との婚姻によって生まれた子供は、完全な人間なのでしょうか? 異類婚姻には、木霊以外の精霊との結婚もあるのでしょうか?

樹霊に限らず、異類婚姻によって生まれてくる子は「普通の子」ではない場合が多いですね。よく力が強いとか、何らかの超能力を持っていると語られます。日本最古の仏教説話集(奈良末〜平安初期の成立)『日本霊異記』には、雷神の申し子である道場法師が怪力を発揮し、自分の所属する元興寺のために、鬼を退治したり水田を開発したりする説話がみられます。また、これらと裏返しになりますが、歴史上著名な人物の卓抜さを〈異常出生〉に求めるという語りの形式が存在し、異類婚姻によって生まれたとか、木の股から拾われたとか、鷹が空から落としてきたといった伝承が語られます。イエス処女懐胎、釈迦の白象が胎内に入ったという霊夢朱蒙の日光感精もみな異常出生です。ちょっと前にブームになった陰陽師安倍晴明も、狐と人間との間に生まれた子供だという伝説が存在します(「信太妻」という歌舞伎にもなっています)。