レポートで「物語における武器イメージ」を扱ったのですが、鎌足の鎌が死神の鎌に似ていると思いました。死神イメージは現代になって構成されたもので、もともとは裁判官のような役割だったのではないかと感じたのですが、先生はどう思いますか?

鎌を持った死に神のイメージは、恐らくタロット・カードあたりから普及するものでしょうから、日本においては現代的なものですね。ただし、その受け皿となった信仰、概念は中国に由来するものとして古代からあります。『霊異記』には、冥界から死期の迫った人物を迎えに来る使者の物語が多く残っており、これは中国初唐の仏教説話集『冥報記』に着想を得たものです。中国の志怪小説には、冥界の支配者泰山府君の活躍する物語を多く見出すことができますが、彼が使者を召喚すべく使者を派遣するのです。千葉県を中心とする古代東国地域からは、かかる冥界からの使者を饗応し送り返すための什器と想定される土器(平川南説)が幾つか出土しています。