「自然の事物や現象に人格的霊魂を認める」というアニミズムより派生した神道から、天皇という存在が崇める対象として生まれたはずなのですが、なぜ自然崇拝から現人神という発想が生じたのでしょう。

古代の神祇信仰ももちろん自然を崇拝する神道的な性質を持っていましたが(正確には、古代の段階では「神道」とは呼ばないのです)、そうした神格をより高位の神格に従属させ自然を支配しようという傾向も備えていました。森羅万象を平等に信仰するアニミズムから、その精霊や神格の間にヒエラルヒーを構築する発想が生じ、その最高位の神格に直結する存在として天皇を設定する操作がなされたのです。ゆえに天皇は、自然神に国家の平安と収穫の豊壌とを祈りつつ、その上に君臨するという矛盾した〈巫祝王〉として出発したのです。しかし、この矛盾は奈良〜平安にかけて亀裂を増し、その政治的・宗教的地位を動揺させてゆくことになります。追々講義でお話ししてゆくつもりです。