古代の人々は、どうして死などの霊的なことについて考えたのか疑問に思いました。アニミズムの考えの源や原因は、研究されているのでしょうか。

前近代社会や民族社会において、宗教は現在の科学と同じような役割を果たしています。私たちはこの世界で生活を営んでゆくうえで、様々な疑問にぶつかります。なぜ太陽は朝に昇り夜に沈むのか、なぜ月は満ち欠けをするのか、なぜ雨は降ってくるのか。単なる好奇心からの場合もあるでしょうが、大部分は生き延びてゆくうえでの必要性から生じる疑問です。現在の私たちはその回答を科学から得ていますが、古代の人々は宗教から獲得していたということです。例えばカナダのチペワイアンという狩猟民はトナカイを主要な狩猟対象とし、季節ごとに北のツンドラと南のタイガを移動するトナカイを川などで待ち伏せ、1年の生活に必要なタンパク源を獲得します。狩猟の成功は偶然性のなかにありますが、村に暮らす女性や子供は、必ず肉が獲得できると信じて、秋の狩猟期には活動を最小限に抑えエネルギーの温存をはかります。彼らが疑念を抱かずそうした行動を取れるのは、カリブーの主が契約に基づいて肉を届けてくれるという神話を信じているからです。つまり、宗教やそれに伴う物語は、前近代社会や民族社会に生きる人々の行動戦略としても「生きて」いるのです。