「人体の具体に固執する」ということは、エジプト等の死体のミイラ化にみられますが、肉内保存など徹底したものに限るのでしょうか。また、どの基準をもって「具体に固執」とするのでしょう。

講義で説明したのは、あくまで屈葬と伸展葬の違いにおいてです。屈葬はわざわざ遺体に加工を加えて意味を持たせるので、埋葬後もその姿形であることが重要だったと思われます。つまり、具体的な形に捕らわれているのですね。一方の自然葬は、遺体に無理な格好をさせません。つまり、重視する事柄が身体から別のものへ移ったのだと考えられます。同時期に展開してゆく環状集落や配石祭場の問題からすると、それは個別性を克服した共同体の祖先の誕生へ帰結するものとみなせるのです。