ギルガメシュの神殺しを聞いていて、『もののけ姫』を思い出しました。西洋人と日本人によっての神殺しの概念は、相互に異なるのでしょうか?

次回には日本の事例も紹介しますが、実は、物語の枠組みとしては大きな相違がないのです。極めてよく似た話が、洋の東西に残っていることもあります。例えば、ヤマタノヲロチ退治だって神殺しですから、日本神話の描写もそれなりに残酷です。ヲロチは酒に酔わされ、首を一本一本切り落とされてしまいます。日本神話を牧歌的と感じるのは幼い頃からのすり込みで、新鮮な気持ちで読み直せばまったく違った風景がみえてくることでしょう。ちなみに、中国の神殺しではよく「神を食べる」ことが行われますが、その言説形式を援用した日本ではそうした表現は避けられているようです。微細な部分をみてゆけば、そこには個々の心性に基づく相違や特徴が現れてきます。