ギルガメシュ神話の史料を読むと、エンキドゥとギルガメシュの関係が気になります。野人の方が立場が上に感じられるのですが? / ギルガメシュが、森の王を殺しにゆくときに野人エンキドゥを同行するのは、どういう意味があるのでしょう。文明が自然を味方に付けて、より大きな自然と敵対するみたいな感じなのでしょうか。

エンキドゥは命令しているというより、ギルガメシュを励ましているのですね。物語的には、ギルガメシュはエンキドゥを心の支えにしている部分があるようで、彼が神々の怒りを得て死んでしまうと、ギルガメシュは不死への志向を強固にしてゆきます。同等の力を持つ2人は親友として描かれていますが、確かにフンババ殺害への同行には「自然の取り込み」という面があるのかも知れません。例えば日本古代においても、大王は「蛮族(夷狄)」として設定した隼人の呪力をあてにして、行幸などの際に犬の吠え声をまねて邪気を祓う〈狗吠〉という行為を科しています。これなど、未開の力をコントロールすることで同種のマイナスエネルギーに対峙する、典型的な事例のひとつといえるでしょう。