イザナミに死者への恐怖がみえるように、死者に対する態度は時とともに負の方向へ傾いていったのでしょうか。

縄文から現代まで一貫して死者が遠ざけられていったかというと、必ずしもそうではないと思います。もっと短いスパンのなかで、死者が親しい存在として扱われたり忌避され遠ざけられたりする。古墳時代においても、竪穴式石室に死者を「封じ込めていた」前期より、横穴式石室で度々接するようになった後期の方が、幾分か近しくはなっているでしょう。しかし、それゆえに死者への感情は複雑化するわけで、全面的な思慕でも逆に洗面的な忌避でもない、両者が入り乱れた愛憎半ばする状態になってくるようです。それは単に、読み込める資料が遺物・遺構から文献に変わってきた、ということのためだけではないような気がします。中国や朝鮮から、死と死者を考え弔うための様々な思想、方法が伝来してくることも一因でしょうね。