イザナミはイザナギを追いかけてゆきますが、彼を襲ってどうするつもりだったのでしょう。この対立は、やはり生者/死者の存在の遠さから来ているのでしょうか。

黄泉の世界へ引き入れるためだった、と解するのが妥当でしょうか。イザナミイザナギも、コトドを渡すときでさえ相手を「愛しき我が那勢命」「愛しき我が那迩妹の命」と呼び合います。イザナミも夫と一緒に暮らしたかったのでしょう。彼女が「吾に辱見せつ」といったのは、夫が禁を破って殿に入り、自分の汚らわしい姿を見てしまったからだと解釈されていますが、本当は、その姿を見たイザナギが「逃げ去ってしまった」からなのかも知れません。彼が逃げ去りさえしなければ、イザナミも手続きを終えて現世へ戻れたのではないか...あくまで憶測ですが、そんな気がします。