黄泉国神話が日本最古の「呪的逃走」を示しているとすれば、その後に作られた昔話などは、この神話の影響を受けていると考えられるのでしょうか。

この神話だけに限定はできませんが、当然影響は与えたと思いますね。『古事記』は室町以降には広く読まれるようになってゆきますし、本文には同神話を載せない『書紀』も、一書第六として紹介しています。中世には『書紀』の神話を様々に注釈して再解釈し、新たな意味と内実を持つ物語りへ転生させてゆく動きが盛んになりますから(「中世神話」というタームで研究されています)、それらの実践が昔話へ繋がってくることは確かだと思います。