瓦を作るのに山がはげ山になるほど木を使ったのでしょうか。樹木信仰が薄れたから木を伐ったのですか？

時代によって波がありますが、日本列島から樹木信仰がなくなるということはありません。しかし並行して木を伐る必要はあった。むしろ日本列島に暮らしてきた人々は、木を伐ることなしには生活を営めなかった、それゆえに（自己の行為を正当化するため）伐採時の祭祀や儀礼を丁重に行ってきたといえるでしょう。樹木の生命を精霊の世界へ返したり建築物の守護神として祀る、〈木鎮め〉と呼ばれる一連の祭儀が列島各地に残っています。しかし、仏教や中国的な建築様式が導入されることで、これまでの木鎮めでは自らの行為を正当化できなくなってきた。そこで王権が採用するのが〈神殺し〉で、木鎮めとは対照的なベクトルの正当化を行い、大規模な開発を可能にしてゆくのです。