位牌の由来の問題ですが、頭蓋骨を立てかけて霊を呼ぶということは、霊自体が常に骨に宿っているということではないのでしょう。しかし、位牌の方には、常に霊が宿っているというイメージがあります。心性の変化があったのでしょうか。

位牌も霊位や戒名・法名を記した札に過ぎませんから、霊魂が常時宿っているという考え方はないと思います。いつも仏壇に置かれており、故人の名前が書かれているので、礼拝する側が勝手に思い込んでしまうということでしょう。例えば浄土真宗という宗派では、死者は極楽浄土に往生して阿弥陀如来と一体化し、生きている私たちを教え導く存在になると考えますが、位牌を故人と思い込む習慣が一般に強いため、あえて位牌自体の使用を禁じています。特定の宗派に拘泥していない日本人というのは、仏壇、位牌、お骨、お墓など、ありとあらゆる場所に死者の存在をみてしまうものです。しかし、それを「宗教的無節操」として否定するのではなく、なぜそうした情況になっているのか、どのような過程を経てたどりついたのかを、きちんと考察する必要があるでしょう。