授業では「地獄と極楽」と表現されていましたが、現在のように「天国と地獄」というのはキリスト教の影響でしょうか。

一般的にはそういわれています。つまり、近代以降のいい方ですね。かなり新しいものでしょう。神祇信仰には天国はありませんし、仏教の「天人道」は、キリスト教の天国に相当する極楽とは異なります。そこに暮らす天人は確かに人間より高位であり、楽の多い存在ですが、天人五衰といって、穢れや老衰の苦を免れることはできません。これもキリスト教の天使とは違うのです。ちなみに五衰とは、衣裳垢膩(衣服が垢で穢れる)・頭上華萎(頭上の華鬘が朽ち萎れる)・身体臭穢(体が穢れて臭くなる)・脇下汗出(脇下から汗が流れる)・不楽本座(本来の座に戻るのを嫌がる)などを意味します。なかなかリアルでしょう。