須弥山ですが、斎槻の仏教的再現なら菩提樹を使えばいいと思うのですが。

釈迦がその樹下で悟りを開いたというインドボダイジュ(クワ科)は、中国中原の寒冷な地域ではうまく育たず、代わりに葉形が似ているボダイジュ(シナノキ科)が用いられるようになったといいます。しかし、そのいずれも古代の日本には存在しませんでした。もちろん、ボダイジュは悟りの象徴であり、仏像でいう三尊形式の原型には菩提樹を中尊としたレリーフも存在しますが、必ずしも仏教的神格の依代というわけではありません。それに対して須弥山は、帝釈天や四天王といった護国仏教に重要な神格が住む山であり、その絵像自体が隋唐の中国で信仰を集めていました。日本でも、仏像の台には多く須弥山を模した須弥壇が置かれます。よって斎槻の仏教的対置物としては、菩提樹より須弥山の方が妥当性があったのでしょう。