中国・朝鮮・日本と同じような話が残っているのは、原型を作ったのが中国で、それが順次伝わってきたということでしょうか。日本も中国と同じ道を歩んできたのだ、という意味が隠されていそうです。

多くはそうでしょう。以前ちょっと触れた崇仏論争の話など、まさに廃仏を克服して隆盛を手に入れた中国仏教の歴史をなぞり、同じ道を辿ってきたことを示すために日本で作られたエピソードと考えられます。平安初期に編纂された日本最古の仏教説話集『日本霊異記』には、やはり中国の仏典と共通するエピソードが日本の出来事として書かれています。これは、中国で起こった仏教的奇跡と同じことが日本でも起こったとすることで、日本が中国に匹敵する仏教国であることを示す意図があったためと推測されています。また、漢籍を利用しうる、つまりそうした豊かな教養があるということが、個人や国家の自負でもあったのでしょう。