もちろん、すべての祖先信仰が樹木信仰になるわけではありません。あくまで飛鳥地域の個別的事例です。樹葉という名前からすると、この衣縫造の祖先は、神木（斎槻と思われる）の祭祀を担い共同体を統轄していたシャーマンだったのでしょう。斎槻はその奉祀対象として飛鳥の中心に位置し、その傍らには代々の首長＝シャーマンの邸宅が建てられていた。飛鳥寺はその邸宅を破壊した跡地に建ったわけで、斎槻の自然信仰を仏教のなかへ取り込んだとも考えられます。蘇我本宗家を倒して飛鳥寺を手中にした改新政府も、同じように斎槻を利用したということでしょう。
