饗応の場が飛鳥寺西の地域に集中しているのは、大槻があった他にも、風水などによる重要性があったのではないでしょうか。

風水はともかく、飛鳥寺西に典型的に現れる山(丘)・清水・樹木がセットになっている空間が、古墳時代以来神聖な場所として重視されてきたのは確かです。現在古墳時代の祭儀として最も注目されているものに、各地域共同体の首長が担った湧水点祭祀・導水祭祀と呼ばれる水の祭祀があります。大地から湧き出す水を豊壌のエネルギー、地霊の象徴として祀ったもので、豊作と共同体の繁栄を保証するものでした。この祭場の多くが、やがて荘園の鎮守や産土神の社となり、歴史時代の神社へ直結してゆくわけです。飛鳥はもちろん、難波・吉野・大津・藤原といった歴代の王宮も同様のロケーションに置かれているので、天皇権威の成立とも関わりある景観と考えられます。