清姫が化けたのは龍ですか蛇ですか。蛇ならもともと男性象徴であったとのことですが、なぜ仏教は蛇=女性としたのでしょう。
角が生えていますが、中国の伝承でも日本の伝承でも、角の生えた蛇というのは出てきます。ただ爪も手足もないので、正確には龍ではないんですね。蛇は全世界的に、湿地に生息することから水神、男根とかけて男性象徴、あるいは脱皮を繰り返すことから再生の象徴とみなされます。最古の神話といわれるシュメールのギルガメシュ神話では、本来ギルガメシュが手に入れるはずだった不死の力を奪ってしまう存在として登場しますが、これも再生象徴です。『旧約聖書』創世記の、イヴを誘惑する蛇もその派生型でしょう。日本でも上記の三種類のモチーフがみえ、上代では三輪山の神などが蛇の姿で登場し、人間の女性のもとに通って子供をなしたりします。しかし仏教が入ってきますと、仏教のなかで位置付ける蛇のイメージ=執念深さ・嫉妬深さ・怒りが、女性に結びつけられてゆくのです。奈良時代には未だ蛇は男性象徴ですが、平安前期頃には女性との繋がりが深くなってゆくようです。