高校での歴史は無名・匿名で「問題」であるというのは、真実でないことを真実であるかのように錯覚してしまう点で、確かによくないと思いました。ただ、この考え方を、教科書の前書きにつけるくらいしか、対処法がないと思います。あらすじを覚えることが一番大事なのではないでしょうか。

確かに、高校までの歴史教育では仕方がないのかも知れません。しかし、教員も生徒も自覚しておかなければならないのは、教科書の記述も、そしてそれをもとになされる教員の授業も、すべて仮説であるということです。とくに、教科書に書かれている通史=あらすじは、歴史叙述のなかでも最も不正確で恣意的なものです(明示されない価値基準によって取捨選択が行われ、非常に限定された情報しか与えられないのですから)。そのことによって、事実の隠蔽や思想の操作を行うことは常に可能です(現にこれまでも実行されてきました)。削除された厖大な情報のなかに大事なものが含まれる場合も多々ありますので、あらすじを学びつつ、その限界を認識して、叙述の適正さを考えるような授業も必要なのだと思います。