「四谷怪談」の四ッ谷は、やはり地名のことなんですか?

そうです。鶴屋南北の書いた戯曲「四谷怪談」は、現在も地名が残る左門町が舞台で、赤穂浪士の食い詰め浪人田宮伊右衛門が自らの出世のために悪行の限りを尽くし、その犠牲となった妻の岩が亡霊となって復讐するという筋です。その成立については幾つか研究がありますが、当時実際にあった事件や風聞をもとに南北が構築したことが分かっています。現在、田宮家のあった場所の付近には、岩を祀る於岩稲荷とその霊を鎮める日蓮宗陽運寺が存在します。この神社では、於岩は窮乏した田宮家を復興した徳の高い女性として扱われていて、人口に膾炙した怪談とは一線を画しているのが面白いところです。