講義でお話ししたような木鎮めの祭儀は、未だに実践している林業地帯はあるはずですし、とくに神社建築を行う場合などには遵守している地域が多いと思います。その典型が、大規模な式年遷宮を行う伊勢神宮であり、同じ伝統のうえに御柱祭を行う諏訪大社でしょう。もちろん、細かな点については長い歴史のなかで変転があり、祭祀の目的も微妙に変わってくることがありますが、形式としては古代のありようをある程度保存していると思われます。なお、自然神に対する祭祀自体は、1万年前の縄文時代より確認できます。そうした点では、7〜8世紀より始まって現代に繋がってゆく祭祀などは、日本列島の歴史のなかでは新しいものでしょうね。