『日本書紀』と『古事記』は、内容的にはどう違うのでしょうか。両書の相違は意図的なものなのですか。

もちろん、この違いは意図的なものです。具体的な内容では、例えば天地開闢の描き方があります。『書紀』はアジア的スタンダードの陰陽説に則って、混沌のなかから気の働きによって天地が生まれるさまを記述しています(高天の原は登場しません)。それに対して『古事記』の方は、天地が生じる以前から高天の原は存在し、それを基盤に初発の神々が生まれてゆくのです。『書紀』は中国や朝鮮を意識して日本が文明国であることを示そうとした歴史書、『古事記』は内廷的かつ統一的な論理でまとめられた八世紀宮室のアイデンティティーであるといえます。