「独自の観点」がこの講義の主要なテーマのようですが、歴史を考えるうえで独自にものを見るとはどういうことなのでしょう。自分が何に興味を持ち、面白いと思うかということですか?

人間の認識、視角というものは、例えば五感のうちの「視覚」にしてみても、個々人で大きな相違があります。もちろん、人間の身体的能力としては大きな相違はありませんが、私たちは現実をそのままに捉えて脳内に映像化しているのではなく、その過程で様々な記憶や思考が作用し、その人だけの「脳内イメージ」を構築しているのです。学問において物事を捉えるより総合的な視覚は、生まれてからこのかた、その人物が身に付けてきた様々な教養、経験によって、あるがままで「独自なもの」「固有なもの」になってゆきます。誰かの見解を鵜呑みにするのではなく、自分自身で考えて取り組んでほしいのです。