先日、「歴史、特に古代なんかやったって必要ない。本当に必要なのはこれだ」と仰った教授がいてショックでした。先生ならどう反対意見を述べますか。

こういう人が大学で教鞭を執っているとは驚きです。あえて歴史学を擁護する必要性もないような、レベルの低い批判ですね。学問とは極めて奥が深いもので、どこまでいっても答えがみつからない、しかしそれを探し続けなければならない、ということがよくあります。懸命に研究すればするほど、自分の未熟さ、至らなさが明らかになってくるものです。歴史学も、事実や真理を探究するひとつのツールでしかありませんから、私も必要に応じて、哲学、宗教学、文学、民族学、人類学、考古学、社会学、経済学、心理学、地理学、生物学、気候学等々の知識を学んでいます。本当に学問に真摯に向き合えば、ありとあらゆる知の領域を貪欲に吸収しようとするものではないでしょうか。「現在」の、極めて限定された価値観に束縛されて「いま必要な学問はこれだ」と自己の正当性を訴え、「○○には意味がない」と他の領域を否定するのは、研究者の姿勢として極めて浅薄といわざるをえません。