熊は威力のある動物ゆえに信仰の対象になったのだと思いますが、弱い動物が主として崇められることはなかったのでしょうか。

例えば兎などは、自然界の生態系ピラミッド上あまり高くない位置にいると思いますが、日本列島では「神」と崇めた痕跡が認められます。『古事記』のオホクニヌシ神話で有名な稲葉の素兎(シロウサギ)も、同書に「兎神」と表記されており、助けてくれたオホナムチの婚姻を予言する重要な役割を帯びています。兎が神聖視されるのは偏にその生殖能力が高いからで、再生の象徴として欧米ではイースター、アジアでは月と関連付けて語られます。キリスト教的観点では、逆にそのことが淫欲の象徴のようにみなされ、性的シンボルとしてバニーガールとして現れるようにもなったわけです。動物に対する信仰は、単に力の強弱によって決まるわけではなく、人間がその動物のどこに特徴を見出し、その時代、社会によって評価されるかに拠っているようです。