狼害が祟りではなく、獣の被害だと認識されるようになるのはなぜでしょう。
動物を神霊と扱う心性が、だんだんと弱まってきたことと関連するのでしょう。熊の場合と同じく、狼も、都市と農村でイメージが異なってきます。都市では、狼は害獣以外の何ものでもありませんが、そこには、中国のもたらした書物の影響もあるでしょう。百科事典にあたる類書など、獣全体の地位の低下や、狼が獣に過ぎないと知らしめることに、少なからぬ役割を果たしたものと思われます。講義でもお話しますが、狼に襲われたという被害話には、ヨーロッパの場合と同じように脚色が含まれているようです。