なぜ中国では神が人間化することになったのでしょう。ヨーロッパの神々との相違も歴史過程の相違から生じるのでしょうか?

日本の『古事記』や『日本書紀』の段階でも、単なる自然の象徴を超えた、人間的な神々が登場します。神や精霊の姿は、おそらく最も古い段階では森羅万象そのものの形で表され、やがてそれらに宿る霊的なものとして人間に近い容姿で表現されるようになります。中国の場合は、この擬人化のベクトルが極度に進み、天界にも冥界にも人間的世界が構築されるに至ったものでしょう。これは、中国人のメンタリティのなかで、文化・文明の力が自然のそれを圧倒しているためであると思われます。また、非常に現実主義的傾向が強いために、現世のありようがそのまま他界へも投影されているものとみられます。どちらかというと、ギリシャ神話のオリュンポスなどは、中国の天界の発展の仕方に近いかも知れませんが、後者は官僚制度などもきちんと整っているのが特色です。これは中国王朝のありかた、中国人のメンタリティに占めるその強度を反映しているのでしょう。