鶴と亀はどちらも稲作に関わるモチーフとして扱われていますが、これらの動物が長寿の象徴とされていることと関係があるのでしょうか。亀にも、鶴のように何かを与えるといったエピソードはあるのでしょうか。

関係あるでしょうね。亀には穂落神的なエピソードはありませんが、アジア圏で最も古い神話は「洛書」に関わるものです。中国の夏王朝を開いた禹が舜帝の命を受けて治水に従事しているとき、洛水から出現した亀の甲羅に描かれていた「宇宙の真理」で、後の魔法陣に繋がってゆきます。中国では、やはり魔法陣を表現したらしい図板を挟んだ「玉亀」が旧石器の遺構より出土しており、図像学的には漢代に確立する式盤へ連続する様子を復原できます。これを背景に、殷代以降、亀甲は神や天の意志の現れる場所として卜占に使用されてゆくことになるのです。浦島太郎の原型である古代の「浦島子」伝承には、こうした歴史の産物として、浦島子を神仙世界へ誘う存在として亀が登場するのです。水田との関係で亀を神聖視していた日本人には、こうした道教的位置づけは受け入れやすかったのではないでしょうか。