具体的にいつ、「一国史からの脱却」が起こったのですか。

80〜90年代が画期であると思います。もともとマルクス主義歴史学には、一国の歴史を世界の枠組みのなかで捉えるという発想がありました。実証主義歴史学も、その母体にドイツやフランスの歴史学、江戸期以来の漢学の流れを持っていましたので、国際的な視野がないわけではなかったのです。80年代以降、冷戦体制の極度な緊張と破綻に伴い、国民国家という機構を相対化しようという機運も高まってきました。それにグローバリゼーションの展開が重なり、一国史の脱却へと歩みが進められていったわけです。