旧石器捏造事件について、なぜそうした事件が起こったのか、充分検証されないまま長い期間を経過してしまったのか、詳しく教えてください。

歴史学界にも多かれ少なかれ認められる現象ですが、考古学の世界では、出身大学や勤務先の機関によって研究者がある程度ランク付けされてしまう権威主義が強く、地方の埋蔵文化財研究所はそうした「巨人」たちに従属している情況がありました。また、埋蔵文化財研究所の仕事は大部分が注目を集めることのないルーチン・ワークで、自身の専門研究を進展させるためには学界が刮目するような発見をする必要があったのです。当時は「日本の石器時代はどこまで遡れるか?」という機運が高まっており、東北地方の各自治体でも、考古遺跡を売り物にして地域の活性化を図ろうという姿勢が強かったのではないかと思います。一考古学者の犯罪というより、学界やそれを取り巻く社会の様々な問題が絡み合い、あのような事件を起こしてしまったのでしょう。