卜占の発展の要因として災禍が挙げられていましたが、果たして実際に予知できていたのでしょうか。

これは「改竄」の問題と関係がありますね。甲骨卜辞には圧倒的に「吉」の占いが多く、人間がコントロールできない自然事象についても王の占いが的中した例をみることができます。実際に占いが外れた場合でも無理矢理当たったようにこじつけたり、後日当たったとして刻み込むことも多かったようです。よって殷代卜占の役割としては、以前に書いたように未来における無限の選択肢のなかからある方向を実現させようとする方法であるとともに、王の権威を誇示する政治的な機能があったと考えられます。それと同時に、「○○の事象は王の占いによって予言されていた」と喧伝することで、予定調和的な未来展望を作り出し社会不安を抑える、という側面もあったものと思われます。